自分史の書き方:文章が苦手でも最後まで書ける10のステップ
自分史は、何から書けばいいのか。読んでほしい人を決め、年表から始め、思い出をひとつずつ集める。文章が苦手な人でも最後まで書ける、自分史の書き方を10のステップで紹介します。
文:Yosuke Sakurai · · 9分で読めます
自分史を書きたいと思っている人は、たくさんいます。けれど、最初の1ページを書き終える人は多くありません。書くことがないからではありません。「自分の人生を一冊の本にする」と考えたとたん、仕事が大きすぎて、どこから手をつければいいのかわからなくなるからです。
抜け道があります。自分史を「書かなければならない本」と考えるのをやめて、「小さな質問にひとつずつ答えていく、長い会話」だと考えることです。会話が十分に続いたとき、そこに残っているものが本になります。
この記事は、自分史を書き残したいすべての人のためのものです。子どもや孫に残したい人、親の自分史づくりを手伝っている人、自分のために書きたい人。文章がうまくなくてもかまいません。必要なのは、始め方と、続け方です。
まずは要点だけ
- 読んでほしい人をひとり決める。書き始める前に、誰に向けて書くのかを決めます。
- 知っている事実から始める。生まれた年、住んだ場所、学校、仕事。年表なら、すぐに書けます。
- 章ではなく、思い出を集める。短い場面をたくさん。構成はあとで考えます。
- 質問にひとつずつ答える。白紙より、よい質問のほうがずっと書きやすいものです。
- 書くのがつらければ、話す。話し言葉は、その人らしい文章のいちばんの材料です。
- わからないことは、わからないと書く。それらしい推測より、正直な空白のほうが価値があります。
1. 誰のために書くかを決める
孫に読んでもらう自分史と、自分のために書く自分史とでは、書き方が変わります。家族に向けて書くなら、自分では説明するまでもないことも説明することになります。黒電話のこと、近所の人がみんな母を名前で呼んでいた理由。自分のためなら、もっと率直に、もっと自由に書けます。
読み手をひとり決めて、その人の顔を思い浮かべてください。どこまで説明するか、これを書くべきか迷ったら、その人なら何を知りたいかを考えます。
2. 自分史年表をつくる
自分史でいちばん書きやすいのは、書類の記入欄で埋められる部分です。まずはそこから始めましょう。紙が文字で埋まり、ほかのすべてを掛けておく骨組みができます。
左に年、右にその年の出来事を書く、簡単な年表で十分です。
- いつ、どこで生まれたか
- 誰に育てられ、家にはほかに誰がいたか
- 住んだ場所(だいたいの順番で)
- 学校、仕事、そのあいだの大きな引っ越し
- それぞれの時期に大切だった人
年は西暦でも和暦でもかまいません。「昭和50年ごろ」のように、和暦で覚えている出来事も多いはずです。両方を並べておくと、あとで家族と話すときにも役立ちます。年表の横に、その年の世の中の出来事を書き添えるのもおすすめです。東京オリンピック、大阪万博、阪神・淡路大震災。「あの年、自分はどこで何をしていたか」が、思い出のきっかけになります。
これはまだ自分史ではありません。骨組みです。それでも、住所を並べただけの一覧が、思いがけないほどたくさんの記憶を呼び起こしてくれます。
3. 章ではなく、思い出を集める
ほとんどの人がやってしまう失敗は、誕生から書き始めて、順番どおりに進もうとすることです。7歳あたりで疲れてしまい、そこで止まってしまいます。
順番は気にせず、思い出したことから書いていきましょう。ひとつの思い出は、ひとつの場面です。ある日の午後、ある会話、今でも覚えているにおい。ひとつにつき10分も書けば十分です。短く、具体的に。
具体的な思い出とは、たとえばこういうものです。
祖母はお菓子の缶を冷蔵庫の上に置いていて、私たちの手は届かなかった。祖母はそれを、大切なものでも扱うように両手で下ろしてくれた。
要約とは、こういうものです。
祖母はとてもやさしく、私たちはよく祖母の家で過ごした。
前者は物語で、後者は読み飛ばされる一文です。十年ではなく、ある日の午後を書いてください。
4. 質問にひとつずつ答える
白紙は「すべてを話してください」と問いかけてきます。これほど答えにくい質問はありません。よい質問は、ひとつのことだけを尋ねます。ひとつのことなら、答えられます。
「どんな子ども時代でしたか?」は大きすぎます。「子どものころ、寝ていた部屋の窓から何が見えましたか?」なら1分で答えられますし、その答えはたいてい次へつながります。家の前の道、近所の人、木が倒れた夏。
どんな質問から始めればいいか迷ったら、自分史を書くための60の質問を用意しました。いちばん古い記憶から、次の世代に伝えたいことまで、時代ごとに並べています。1日にひとつ選んでください。順番どおりでなくてかまいません。記憶があたたかいところから始めましょう。
5. 書くのがつらければ、話す
キーボードの前では手が止まってしまう人でも、育った家のことなら1時間でも話せたりします。そういう人は、書く代わりに録音しましょう。友だちに話すつもりで質問に声で答え、それを文字にして、少し整えます。
話し言葉には、書き言葉ではなかなか出せないリズムがあります。方言や口ぐせも、できるだけそのまま残してください。あとで読む人は、そこにあなたの声を聞くはずです。
6. 写真を手がかりにする
古い写真は、扉がすでに開いている思い出です。1枚選んで、自分に尋ねてみてください。
- どこで撮った写真で、なぜそこにいたのか
- 撮る直前と直後に、何があったか
- 写っていないけれど、覚えていることは何か
写真の裏にある物語は、写っているものとあまり関係がないことも多いものです。そして、書き残す価値があるのはその部分です。
7. 章の形は、あとから見えてくる
思い出が数十個集まると、それがいくつかのまとまりになっていることに気づくはずです。角の家で暮らしたころ、上京してからの数年、子どもが生まれてから、孫ができてから。そのまとまりが、あなたの自分史の章になります。
最初から章を決めてしまう必要はありません。人生は10年ごとにきれいに区切れるものではなく、自分にとって大切な時期は2年かもしれないし、20年かもしれません。章は材料から自然に生まれてくるものです。書き進めるうちに、名前を変えたり、分けたり、まとめたりすることになるでしょう。
8. わからないことは、正直に書く
すべてを覚えている人はいませんし、それでかまいません。わからないことは、わからないと書いてください。「なぜ大阪を離れたのか、結局聞かずじまいだった」。空白は正直さのしるしであり、役にも立ちます。きょうだいやいとこ、昔の家族の友人に、何を聞けばいいかを教えてくれるからです。
してはいけないのは、空白をもっともらしい推測で埋めることです。自分史の価値は、それが本当であることにあります。つくり話は、どんなによくできていても、まわりの本当の話まで少しずつ損なってしまいます。
9. 何を書かずにおくかを決める
すべてを書く必要はありません。ほかの人にも関わる思い出もあれば、まだ人に話す準備ができていない思い出もあります。自分のためだけに書いて、ほかの人が読む版には入れない。まったく書かずにおく。どちらもまったく問題ありません。
つらい出来事を、人に見せずに書くことは、あなた自身のためになるかもしれません。1986年、心理学者のジェームズ・ペネベーカーとサンドラ・ビールは、学生たちに、つらい体験について毎晩15分、4日続けて書いてもらいました。事実と気持ちの両方を書いた学生は、書いた直後こそ気持ちが沈んだものの、その後の6か月間に学内の診療所を訪れた回数が、日常的な話題を書いた学生より少なかったのです。著者たちはこの結果を予備的なものとしていますし、のちの146の研究をまとめた2006年のレビューでは、効果は確かにあるものの小さいとされています。それでも、誰にも読まれないからといって、つらい部分を飛ばさなくていい理由にはなります。
書かない部分があっても、それはあなたの自分史です。
10. 無理のないペースで続ける
自分史を書き上げるのは、少しずつ、こまめに書く人です。1日にひとつ、あるいは週にいくつかの質問。それだけで、思っているより早く一冊になります。何週間か休んでもかまいません。自分史は待っていてくれます。
役に立たないのは、罪悪感です。1週間書けなかったとしても、何かに失敗したわけではありません。次の質問を選んで、また続ければいいのです。
よくある不安
「わたしの人生は、本にするほどおもしろくない」
どんな人生も、それを読みたい人にとってはおもしろいものです。孫が知りたいのは冒険ではありません。あなたの家の台所がどんなにおいだったか。自分と同じ年のころ、あなたが何をこわがっていたか。そうした毎日の細かなことこそ、最初に消えてしまうものです。
「あまり覚えていない」
思っているより、あなたはたくさんのことを覚えています。引き出すための、ちょうどいい質問が必要なだけです。出来事よりも、場所や物から始めてみてください。記憶は物にくっついています。
「文章がうまくない」
うまくなくてかまいません。気のきいた文章より、わかりやすく具体的な文章のほうがずっと伝わります。話すように書いて、あとで整えれば十分です。
「どれくらいの長さにすればいい?」
必要なだけの長さで。本当のことが具体的に書かれた30ページは、要約ばかりの300ページよりも価値があります。
「手間をかける意味はある?」
振り返ることが人のためになるという、確かな根拠があります。1963年、精神科医のロバート・バトラーは、高齢者が昔の記憶に立ち返るのは過去に逃げているのではなく、年を重ねるなかでの自然な営みだと論じ、それを「ライフレビュー」と呼びました。この考え方は、日本の介護や医療の現場でも「回想法」として広く取り入れられています。2012年には、マーティン・ピンカートとサイモン・フォルストマイヤーが、回想を用いた取り組みを対照群と比べた128の研究をまとめ、抑うつと、自分が生きてきた人生を受け入れる感覚(自我の統合)に中程度の改善があり、その多くが続いたと報告しています。自分史を書くことは治療ではありませんが、意識して思い出すという同じ習慣に支えられています。
Eveにできること
この記事で紹介した方法は、Ever JournalのAIの聞き手、Eveのやり方そのものです。生まれた日と場所、育ててくれた人といった基本を伝えると、Eveはすぐに第一章の下書きを書きます。まだ知らないことは、つくり話で埋めずに「まだ知らないこと」として残します。そのあとは、自分史のいちばん大きな空白について、質問をひとつずつ投げかけます。
答えは文字で打つほか、Eve+なら声で話したり、古い写真を添えたりもできます。Eveは答えを本に書き加え、どこが変わったかをそのまま見せ、自分史が育つにつれて章を整えていきます。「Eveに見せない」にした記録は、本には一切使われません。
残す言葉を決めるのは、いつもあなたです。Eveは、次の質問がいつも待っているようにするだけです。無料プランとEve+の違いは、料金のページでご覧いただけます。
参考文献
- Robert N. Butler, “The life review: an interpretation of reminiscence in the aged“, Psychiatry, 1963
- Martin Pinquart and Simon Forstmeier, “Effects of reminiscence interventions on psychosocial outcomes: a meta-analysis“, Aging & Mental Health, 2012
- James W. Pennebaker and Sandra K. Beall, “Confronting a traumatic event: toward an understanding of inhibition and disease“, Journal of Abnormal Psychology, 1986
- Joanne Frattaroli, “Experimental disclosure and its moderators: a meta-analysis“, Psychological Bulletin, 2006