第二章

自分史を書くための60の質問:子どものころから今まで、時代別に

自分史を書くときに役立つ60の質問を、生まれたころから仕事、恋愛と結婚、人生の転機まで時代別にまとめました。親や祖父母に聞くときのコツ、高齢の方や介護の現場で使うときの工夫も紹介します。

文:Yosuke Sakurai · · 9分で読めます

伝記作家は、「あなたの人生について話してください」とは言いません。小さく具体的な質問をして、次の質問につながる細部に耳を澄ませます。ここに挙げる60の質問も同じです。自分の自分史を書くのにも、親や祖父母に聞いて書き残すのにも使えます。

時代ごとに並べていますが、順番どおりでなくてかまいません。記憶がいちばんあたたかいところから始めてください。1日にひとつ、よい答えがあれば十分です。

よい答えを引き出すコツ

  • 質問はひとつずつ。ひとつに答えきってから、次へ進みます。
  • 要約ではなく、場面を。「貧しかった」ではなく、暖房が壊れた冬のことを。
  • 名前と場所を。通りの名前、先生の名前、飼っていた犬の名前。具体的なことが、あなただけの話にしてくれます。
  • 遠慮なく飛ばす。ぴんとこない質問や、重すぎる質問は、飛ばしてかまいません。
  • 声に出して答える。書くと堅くなるなら、録音して、あとで文字にします。

生まれたころ

  1. いつ、どこで生まれましたか。その日のことで、聞いている話はありますか。
  2. 名前は誰がつけましたか。名前の由来を知っていますか。
  3. いちばん古い記憶は何ですか。
  4. 小さいころ寝ていた部屋の窓から、何が見えましたか。
  5. 家はどんなにおいがしましたか。
  6. 小学校に上がる前、ふだんの一日はどんなふうでしたか。
  7. 小さいころ、何がこわかったですか。
  8. 赤ちゃんのころのあなたについて、家族がよく話す話はありますか。

よい質問は、たいてい前の答えから生まれます。坂の上の家の話が出たら、次に聞くのは学校のことではありません。その家のことです。

家族と家

  1. 誰に育てられましたか。その人は、あなたが小さいころどんな人でしたか。
  2. 親や育ててくれた人は、どんな仕事をしていましたか。
  3. 家の食卓は、どんな様子でしたか。
  4. 家にはどんな決まりがありましたか。破ったのはどれですか。
  5. いちばんよく知っている祖父母、おじ、おばは誰ですか。その人の何を覚えていますか。
  6. お正月やお盆には、家族で何をしていましたか。
  7. 家族のあいだで、話題にしなかったことはありますか。
  8. きょうだいがいたなら、そのなかであなたはどんな立場でしたか。

学校と子ども時代

  1. 小学校の入学式の日のことで、覚えていることはありますか。
  2. 今でも思い出す先生は誰ですか。それはなぜですか。
  3. 子どものころの親友は誰で、一緒に何をしていましたか。
  4. 大きくなったら、何になりたかったですか。
  5. 放課後や夏休みは、何をして過ごしていましたか。
  6. 部活動は何をしていましたか。そこでいちばん覚えていることは何ですか。
  7. 十代のころ、好きだった音楽や本、テレビ番組は何ですか。
  8. 修学旅行で覚えていることはありますか。

大人になるころ

  1. 実家を出たのはいつで、どこへ行きましたか。
  2. 初めての一人暮らしの部屋は、どんなところでしたか。
  3. 自分ひとりで決めた、最初の大きな決断は何でしたか。
  4. 十代の終わりから二十代に、いちばん助けてくれたのは誰ですか。
  5. 二十歳のころに信じていて、今は信じていないことは何ですか。
  6. その時期、いちばんつらかったことは何ですか。
  7. いちばん誇らしかったことは何ですか。
  8. 当時の大きなニュースを、どこで知りましたか。それはあなたにとって、どんな意味がありましたか。

仕事

  1. 初めてお金をもらった仕事は何でしたか。
  2. 長く続けた仕事には、どうやって就きましたか。
  3. 一緒に働いたなかで、いちばんよかった人は誰ですか。
  4. ふだんの仕事の一日は、どんなふうでしたか。
  5. 仕事でいちばん大変だった時期はいつですか。
  6. 仕事でいちばん誇りに思っていることは何ですか。
  7. ほかの仕事を選べたなら、何をしていたと思いますか。

恋愛と友情

  1. いちばん親しい友人たちとは、どうやって出会いましたか。
  2. 初恋の人は誰で、その人の何を覚えていますか。
  3. パートナーがいるなら、どうやって出会いましたか。
  4. 誰かに心からやさしくしてもらった瞬間はありますか。
  5. 終わってしまった友情で、今も思い出すものはありますか。
  6. 人を愛することから、何を学びましたか。
  7. 子どもがいるなら、それぞれが生まれた日のことで何を覚えていますか。

住んだ場所

  1. これまで住んだなかで、いちばん「家」だと感じた場所はどこですか。
  2. 忘れられない旅はありますか。
  3. 昔の部屋をひとつ、できるだけ細かく思い出してみてください。
  4. 心を落ち着けたいとき、頭のなかで行く場所はどこですか。
  5. 二度と戻っていない場所はありますか。それはなぜですか。
  6. 育った町で、いちばん変わったのは何ですか。

人生の転機

  1. 人生を「その前」と「その後」に分けた日はありますか。
  2. してよかったと思う決断は何ですか。
  3. あなたを変えた別れはありますか。
  4. 思ってもみなかった方向に人生が進んだのは、いつですか。

振り返って

  1. いちばん感謝していることは何ですか。
  2. 二十歳の自分に、何と言ってあげたいですか。
  3. あなたのことを、人にどう覚えていてほしいですか。
  4. 誰にも話したことがないことはありますか。今なら話せそうですか。

親や祖父母に聞くときは

人に聞きながら書くときは、いくつかの習慣で大きく変わります。

  • 会話を録音する。あとで、その人の言葉そのものと声が必要になります。
  • 話の流れについていく。「それからどうなったの?」「そのとき、どんな気持ちだった?」のほうが、リストの次の質問より多くを引き出します。
  • 物を持っていく。古い写真、ふるさとの地図、料理のメモ。物が記憶の鍵を開けます。
  • 話が乗っているうちに終える。30〜40分で十分です。続きは別の日に聞きましょう。
  • わからないことも書き留める。空白は、あとできょうだいやいとこに聞くための手がかりになります。

親に聞いておきたいことは、親や祖父母が元気なうちに聞いておきたい40の質問にまとめています。

高齢の方や、介護の現場で使うときは

60の質問は、何歳の方にも使えます。ただ、80代や90代の方に聞くときや、介護施設やデイサービスで回想の時間を持つときは、少し工夫すると話が弾みます。

十代と二十代から始める

心理学では「レミニセンス・バンプ」と呼ばれる現象が知られています。年を重ねた人にとって、10歳から30歳ごろまでの記憶は、数が多く、鮮やかで、本人が大切だと感じるものが多いのです。デイヴィッド・ルービンとマシュー・シュルキンドが70歳の人たちに人生でいちばん大切な5つの記憶を尋ねたところ、その多くはひとつの十年、つまり二十代のものでした。好きな映画や音楽、本も、たいていこの時期のものです。

ですから高齢の方には、いつも子ども時代から始める必要はありません。「大人になるころ」「仕事」「恋愛と友情」の質問のほうが、話が豊かになることがよくあります。幼いころの話は、会話があたたまってからでもかまいません。

話しやすい10の質問

具体的なので、疲れている日でも答えやすい質問です。

  • 18歳のころを思い出す歌は何ですか。
  • 若いころ、土曜の夜は何をしていましたか。
  • 初任給で何を買いましたか。
  • 結婚式の日は、何を着ましたか。
  • 近所の商店街で、いちばん覚えているお店はどこですか。誰がやっていましたか。
  • どうやって移動していましたか。バスですか、自転車ですか、歩いてですか。
  • お母さんやお父さんがつくってくれた料理で、今はもう誰もつくらないものはありますか。
  • 毎日使っていたもので、今の若い人が見たこともないものは何ですか。
  • 子育てをしていたころの日曜日は、どんなふうでしたか。
  • これまでにもらった、いちばんのアドバイスは何ですか。

音楽と写真を持っていく

音楽は、記憶を呼び起こすいちばん強いきっかけのひとつです。2012年にフランスで行われた研究では、アルツハイマー病の人と、健康な若い人や高齢の人に、自分で選んだ音楽を聴いたあとと、静かな中とで、思い出を語ってもらいました。音楽のあとに出てきた思い出のほうが、より具体的で、感情がこもっていて、早く出てきたのです。18歳のころに聴いていた曲を尋ね、それを流して、どこに連れていってくれるかを聞いてみてください。

写真も同じです。とくに十代や二十代の写真がよいでしょう。撮る直前に何があったか、写っていないのは誰かを聞いてみてください。

記憶があいまいになってきたら

  • 質問はひとつずつ、そして待つ。「何を飲みますか?」より「コーヒーにしますか?」のように、はい・いいえで答えられる聞き方のほうが答えやすくなります。思い出話も同じで、「最初の仕事は何でしたか?」より「最初の仕事は工場でしたか?」のほうが答えやすいのです。
  • 知っていることを先に伝える。「お母さんから、お父さんとは職場で出会ったって聞いたよ」と言えば、話の手がかりになります。「覚えてる?」は試されているように感じさせることがあるので、避けましょう。
  • 間違いを正さない。二度目に聞く話や、前と少し違う話でも、それはその人の話です。話の中にある気持ちを受け止めてください。
  • 気持ちについていく。悲しみが出てきたら、そっと寄り添うか、別の話に移りましょう。事実より、そのときの気持ちのほうが大切なこともよくあります。

介護施設やデイサービスでは

  • 時間は短く。20〜30分を、その方がいちばん元気な時間帯に、顔がよく見える静かな部屋で。
  • 一対一とグループを組み合わせる。認知症の方との回想法についての22の研究をまとめた2018年のコクラン・レビューでは、効果は全体として小さいものの、害を示す根拠はありませんでした。一対一の回想は気分や認知機能のわずかな改善に、グループでの回想はコミュニケーションのわずかな改善に、それぞれ結びついていた可能性があります。
  • グループにはテーマをひとつ。学校、初めての仕事、結婚式。卒業アルバムやレコードのジャケット、古い缶など、当時の物を回して、順番にひとりずつ話してもらいます。
  • その方の言葉をそのまま書き留める。許可を得て録音してもよいでしょう。写しをご家族に渡すと、とても喜ばれます。家族にとっては、事実と同じくらい、その人らしい言い回しが宝物です。

質問は、Eveにまかせる

60の質問にひとりで向き合うには根気がいりますし、いちばんよい次の質問は、それまでに何を話したかによって変わります。そのためにいるのが、Ever JournalのAIの聞き手、Eveです。Eveはいくつかの基本から第一章の下書きを書き、自分史のいちばん大きな空白を見つけて、そこについて質問をひとつずつ投げかけます。答えは文字で打つほか、Eve+なら声で話したり、写真を添えたりもできます。Eveは答えを本に書き加え、どこが変わったかをそのまま見せてくれます。

ペンで始めたい方には、このリストが長く役立つはずです。誰かに聞き続けてほしい方には、Eveがいつでも待っています。全体の進め方は、自分史の書き方にまとめています。

参考文献

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