第三章

親や祖父母が元気なうちに聞いておきたい40の質問

親が元気なうちに聞いておきたいことを、40の質問にまとめました。生い立ちや家族の歴史から、医療や介護、お墓のことまで。エンディングノートや人生会議にもつながる、やさしい聞き方も紹介します。

文:Yosuke Sakurai · · 10分で読めます

「いつか聞こうと思っていた」。そう思うきっかけは、たいてい何かの出来事です。帰省したとき、親が急に年を取ったように見えた。病気が見つかった。転んでけがをした。友人の親が亡くなった。その奥にあるのは、シンプルな心配です。親にしか答えられないことがあって、いつか、それを聞けなくなる日が来る。

聞かずに後悔することは、大きく2種類に分かれます。ひとつは物語です。あなたが生まれる前の親はどんな人だったのか、家族はどこから来たのか、小さいころのあなたはどんな子だったのか。もうひとつは希望です。重い病気になったらどうしたいか、亡くなったあとのことをどうしてほしいか。どちらも、先延ばしにするほど聞きにくくなります。この記事では両方を挙げています。時間が限られているときに大切な6つの質問から始めて、最後に「お別れの話」のように感じさせない聞き方を紹介します。

まずは要点だけ

  • お別れの話にしない。「そういえば、二人がどうやって出会ったか知らないな」は扉を開きます。「元気なうちに聞いておかないと」は、扉を閉ざしてしまうことがあります。
  • 思い出話から始めて、希望はそのあとで。昔の車の話で1時間笑ったあとなら、むずかしい質問もしやすくなります。
  • 親にしか答えられないことを聞く。あなたが小さいころのこと、家族の名前、なぜそうなったのか。
  • 希望については一度、はっきり聞く。そして答えを、家族が見つけられる場所に書き残します。
  • 許可を得て録音する。あとでいちばん恋しくなるのは、その人の声です。
  • 時間が少ないなら、最初の6つだけで十分です。リストを全部終える必要はありません。

時間があまりないなら、ここから

親の病気が重いとき、長いリストはいちばん必要のないものです。次の6つは、言っておけばよかった、聞いておけばよかったと多くの人が思うことを押さえています。どれかひとつだけで、その日の会話になります。

  1. 私が知らないかもしれないことで、知っておいてほしいことはある?
  2. いちばん誇りに思っていることは何?
  3. 会いたい人、電話したい人、仲直りしたい人はいる?
  4. これからの時間をよりよく過ごすために、何があるといい? 私たちにできることは?
  5. 自分のことや家族のことで、心配していることはある?
  6. 家族に、どんなふうに覚えていてほしい?

質問でなくてもかまいません。「ありがとう」「ごめんね」「大好きだよ」は質問ではありませんが、お互いが本当はそこにたどり着きたいと思っている言葉であることも多いものです。どう切り出せばいいかわからなければ、病院のスタッフに相談してみてください。医師や看護師、医療ソーシャルワーカー、緩和ケアのスタッフは、こうした家族の話し合いに日々立ち会っています。

親の生い立ち

あなたが生まれる前の親が、どんな人だったのか。たいていの親はこうした質問を楽しんでくれるので、始めるならここからです。

  1. どこで育ったの? 家はどんなところだった?
  2. おじいちゃんとおばあちゃんは、どんな人だった? それぞれから何を学んだ?
  3. 子どものころはどんな子だった? どんなことで叱られた?
  4. 若いころの親友は誰? その人は今どうしている?
  5. 子どものころ、何になりたかった?
  6. お父さん(お母さん)とは、どうやって出会ったの? 最初にどこに惹かれた?
  7. 誇りに思っている仕事は? ただ我慢していた仕事は?
  8. 人生でいちばん大変だった時期はいつ? 何が支えになった?

両親がそろっている家族ばかりではありませんし、結婚や幸せな結末がある家族ばかりでもありません。質問は、あなたの家族に合わせて変えてください。「人生で大切だった人は誰?」なら、ほとんど誰にでも聞けます。

親にしか答えられないこと

その人がいなくなると、一緒に消えてしまう記憶があります。あとから調べても、わからない答えです。

  1. 私が生まれた日のこと、何を覚えてる?
  2. 私の名前は、どうやって決めたの?
  3. 私が覚えていないくらい小さいころ、私はどんな子だった?
  4. ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの名前は? その前は、家族はどこに住んでいたの?
  5. 古い写真に写っているのは誰?
  6. 家族に多い病気で、私が知っておいたほうがいいものはある?
  7. 残しておきたい家の味や、歌、口ぐせはある? 教えてくれる?
  8. まだ話したことのない、家族の話はある?

20番目の質問は飛ばしがちですが、聞く価値があります。健康診断や病院の問診では、心臓病やがん、糖尿病などの家族歴を聞かれます。あなたの側の家族について答えられるのは、親だけかもしれません。

18番目の質問は、名前の漢字までその場で確かめておきましょう。祖父母より前の名前や本籍地は、戸籍をたどって調べられることもありますが、どんな人だったかは戸籍には書かれていません。

19番目の質問は、静かな午後に一緒にできます。写真の裏やアルバムのメモに、名前と場所、だいたいの年を書いておきましょう。誰が写っているのかわからない写真の箱は、家族が受け継ぐもののなかでも、いちばんさびしいもののひとつです。

愛情、後悔、大切にしていること

ここからは、お互いに少し勇気がいる質問です。会話がうまく進んでいるときに取っておき、どこまで話すかは親に決めてもらいましょう。

  1. 人生でいちばん幸せだったのはいつ?
  2. いちばんよかった決断は何?
  3. やり直せるなら、違うふうにしたいことはある?
  4. 連絡が途絶えてしまったけれど、今も思い出す人はいる?
  5. 親になって、いちばん驚いたことは何?
  6. 私の年のころ、誰かに言ってほしかったことは何?
  7. ずっと私に言いたかったことはある?
  8. 年を取ることを、どう感じてる? こわいと思うことはある?
  9. 人生や信仰、死んだあとのことについて、どう考えてる?

答えを聞いて涙が出ても、あなたが何かを間違えたわけではありません。そのまま一緒にいて、続けるかどうかは親に決めてもらいましょう。

これからの希望

誰もが先延ばしにして、あとで聞いておけばよかったと思う質問です。楽しい話ではありませんが、聞かれてほっとする親も多いものです。答えを知っている家族は、いちばんつらいときに、あれこれ推し量らずにすみます。一度、はっきりと聞いて、答えを書き残しましょう。

  1. もし重い病気になったら、何をいちばん大切にしたい? 受けたくない治療はある?
  2. 自分で決められなくなったとき、誰に代わりに決めてほしい? そのことを書き残してある?
  3. 最期を過ごす場所を選べるなら、どこがいい? 家、緩和ケア病棟、それとも病院?
  4. 遺言書はある? どこに保管してある?
  5. 大事な書類や通帳、パスワードはどこにある?
  6. もしものとき、誰に連絡すればいい? 弁護士や税理士、知らせてほしい友人は?
  7. お葬式やお墓のことは、どうしたい? 宗派やお寺のことも教えて。
  8. 特定の人に渡したいものはある?
  9. 亡くなったあと、家族にしてほしいこと、してほしくないことはある?

厚生労働省は、もしものときにどんな医療やケアを望むかを、元気なうちから家族や医療・介護のスタッフと繰り返し話し合っておくことを「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニング)と呼んで、すすめています。32番目から34番目の質問は、その入り口になります。

答えはエンディングノートにまとめておくと、家族が見つけやすくなります。ただし、エンディングノートに法的な効力はありません。遺言書や任意後見契約などは法律にかかわる書類で、作り方にも決まりがあります。まだ用意がなければ、弁護士や司法書士、公証役場に相談すると、何が必要かを教えてもらえます。あなたの役目は、親が何を望んでいるかを知ることだけです。

「お別れの話」のように感じさせない聞き方

死とは別のきっかけをつくる

お正月やお盆の帰省、誕生日、敬老の日、孫の学校の宿題、引き出しから出てきた古い写真。「そういえば、二人がどうやって出会ったか知らないな」のほうが、「ちょっと大事な話があるんだけど」より、ずっと始めやすいはずです。

思い出話から始める

子どものころの話、初めての仕事、なかなかエンジンがかからなかった車の話から始めましょう。希望の話にたどり着くころには、あなたは悪い知らせを伝えに来た子どもではなく、話の弾んでいる相手になっています。

向かい合わず、並んで話す

いちばんいい会話は、車の中や台所、散歩の途中で生まれることがよくあります。テーブルをはさんで向かい合わないほうが、インタビューらしさが薄れます。

希望を聞くときは、理由を正直に

「いざというとき、迷わずにすむように」。これは本当のことで、やさしい言葉でもあります。たいていの親も、子どもに迷わせたくないと思っています。

「まだいい」と言われたら

話題を変えられたら、そのままにしましょう。別の日にあらためるか、別の入り方を試してみてください(下に、いくつか紹介します)。

親それぞれに、ひとりずつ聞く

親は、二人そろっているときと、ひとりのときとで、違う話をするものです。それぞれに、もう一人がまだ聞いていない希望があるかもしれません。

きょうだいで分担する

誰が何を聞くかを決めて、答えを共有しましょう。同じつらい質問を、親が三回聞かれずにすみます。

むずかしいときは

話したがらないとき

話したくない親もいますし、それはその人の自由です。やさしい入り方のひとつは、ほかの人のことを聞くことです。「おばあちゃんが亡くなったとき、どうだった? こうしておけばよかったと思うことはある?」。人は、亡くした人のことを話しながら、自分のことを語っていることがよくあります。手紙もよい方法です。口で言うより、書くほうが楽な親もいます。

病気のとき

会う時間は短くして、いちばん頭がはっきりしている時間帯を選びましょう。朝であることが多いようです。何を話すかは、親に任せてください。病院のスタッフも、こうした話の時間をつくる手助けをしてくれます。

記憶があいまいになってきたら

先週のことより、遠い昔のことのほうがはっきりしていることが多いものです。子どものころの話や写真、音楽を頼りにしましょう。間違いを正したり、日付を確かめたりはしないでください。希望について話しておきたいことがあるなら、本人が自分で決められるうちに、早めに聞くほうがやさしいでしょう。

関係が複雑なとき

完璧な会話をする義務は、誰にもありません。知りたいことだけを聞きましょう。家族の歴史と病気のことだけ、という人もいますし、それで十分です。

祖父母に聞くときは

祖父母が元気なら、親とはまた違う話が聞けます。昭和の暮らし、町の移り変わり、そして、あなたの親が子どもだったころのこと。親子のあいだでは照れくさい話も、孫になら話してくれることがあります。

  • 子どものころの町には、何があった?
  • 家に初めてテレビが来た日のことを覚えてる?
  • 戦争が終わったあとの暮らしについて、親から聞いた話はある?
  • 若いころは、どんな仕事をしていた? 初任給はいくらだった?
  • おじいちゃん(おばあちゃん)とは、どうやって出会ったの? お見合いだった?
  • お父さん(お母さん)は、小さいころどんな子だった?
  • 家に伝わっている料理や行事はある?
  • 今の時代を見て、いちばん変わったと思うことは何?

聞くときは、静かで聞こえやすい場所を選び、ゆっくり、はっきり話しましょう。一回は短めにして、何度かに分けるほうが、お互いに疲れません。

聞いたことを残す

  • 許可を得て録音する。スマートフォンの録音アプリで十分です。何年もたってから、家族がいちばん大切にするのが、その録音であることはよくあります。
  • 希望は別に書き留める。エンディングノートなどにまとめて、必要になる人と共有し、写しを大事な書類と一緒にしまっておきます。
  • 話しながら写真に名前をつける。名前と場所、だいたいの年を。
  • 名前と漢字を書き留める。記憶が新しいうちに。

録音した会話を、家族が読める物語にしていくなら、自分史の書き方が役に立ちます。人生全体について聞きたいときは、自分史を書くための60の質問もどうぞ。

親が自分で語りたいなら

インタビューされるより、自分のペースで語りたい親もいます。Ever Journalは、そのための場所です。AIの聞き手Eveが、いくつかの基本から第一章の下書きを書き、自分史のいちばん大きな空白について、質問をひとつずつ投げかけます。答えは文字で打つほか、Eve+なら声で話すこともできます。Eveは聞いたことだけをもとに書き、まだ知らないことを推測で埋めることはありません。本はその人のアカウントだけのもので、いつでもすべてをダウンロードできます。

Eveが手伝うのは、物語です。希望は紙に書いて、必要になる人と共有しておきましょう。

目次に戻る